卓球ラケット開発の悲喜こもごも(7)
耐久力を把握するための検査
ラケット開発は卓球ラケットとして高い性能が確認できれば終わりではない。そのラケットを使用する上でどのくらいの耐久力があるのかを検査を行う必要がある。
例えば、グリップを接着後にグリップを破壊し、どの様な形状になるのかの確認する。仮に接着面から外れれば、接着に改善の必要あるという結果になる。このような破壊検査を何項目か行うのだが、最も重視している点は、ラケット表面板、つまり上板の耐久力検査である。皆さんも経験があると思うが、ラバー張り替えの時にラケットの上板がラバーにくっついてはがれてしまう、あれだ。
特にラケット上板に比較的軟質材を使っている場合は注意が必要だ。上の写真はラバーの貼り換えによって上板がはがれてしまっているものだ。はがれ方は樹種によってさまざまだが、弊社では、国内メーカーが販売している中で、最も接着力の強いラバー接着剤で繰り返しラバー貼り・はがしを行うことでラケット上板の耐久性を確認している。弊社では、上板の耐久性検査を徹底して行った結果、硬質材であっても特殊塗装をラケットに行うことで上板の耐久力を向上させている。
もし、ラケットの上板のはがれが気になる方がいたら、ラケットコートは国内メーカーからも販売されているため使用してみるのも良いかもしれない。その場合、ラケットの側面も塗ることをお薦めする。ラケットの側面は木材の断面になっており、この断面は上板面に比べて性質上およそ3倍以上湿気に弱い。加えて側面は最も台に強打しやすい部分でもある。せっかくラケットコートを購入した場合はラケット側面もしっかり塗ることで、ラケットを長持ちさせることができる。
話がそれてしまったが、木材は自然物のため、上板が必ず剥がれないとか、必ずグリップが壊れないなどということは断言できない。木材は厳密にいえば、樹種によっても、個体によっても、また部位によっても性質は必ずしも均一ではない。メーカー側がラケットの耐久性を向上させる努力をすることはもちろんだが、使用者側も、上板がやわらかければ、ラケットコートを使用したり、サラサラ系のラバー接着材を使うなど、少しの知識と工夫で用具を長く愛用することができると思う。