祝3周年 卓球ラケットメーカーWINGSPANのこだわり
WINGSPANは2021年1月に創業した。そのため今年で3周年となります。このホームページをご覧の皆様、そしてカーブラインシリーズを愛用されている皆様、そして関係者の皆様に改めて感謝とお礼を申し上げます。おかげさまで3周年を無事に迎えることができました。
最近、ゴルダーズグリーンの開発についてのブログを書こうと思い、久しぶりに倉庫から創業前に作った試作ラケットを引っ張り出して衝撃を受けた。驚くほどたくさんの特殊素材を使ったカーブラインシリーズのラケットが出てきたのだ。アウターカーボン、インナーカーボン、それぞれ厚みの違うカーボン、その他ファイバー素材など、まあ、数多くの特殊素材のラケットを作ったものだと改めて見入ってしまった。
創業前から試作ラケットを多く作っていたが、卓球メーカーは特殊素材を使うべきだという先入観があったことは否めない。そこからWINGSPANの第1弾商品となるミルラとブライターレイターを出すまでの間に、あえて特殊素材を使わず木材のみで勝負したいと思うように考えが変わった。それは漫画ピンポンでペコが焼却炉で単板のペンラケットを燃やしたように、純木材ラケットは綺麗に燃えますというようなSDGs的な観点ではなく、もっと本質的な木材の扱いに長けた文化と歴史を持つ日本という環境を生かして、木材という天然素材のみのラケットの可能性を追求したいという思いに起因している。
振り返ってみると、ラケット開発担当の私は、学生時代に極めて理想的な環境に身を置いていた。大学の木材加工工房は大型機械や工具が整っていて夜まで使い放題だったばかりか、端材とはいえ自由に使える多くの木材ストックまであった。また、合成繊維・合成樹脂を扱う大手繊維会社の元研究員の講義を受講していて、その講義は高い強度がありながら超軽量な素材の開発がテーマだった。一方で落差は激しいが、中世ヨーロッパ時代の木材を含めた天然素材や天然樹脂の扱い方などを学ぶこともできたのだ。
しかし、大学の学びというものは大抵の人は、卒業してからその意味と価値に気が付くもので、私もご多分にもれなかった。ホワイトボードにびっしりと化学式が書き込まれた元研究員の講義は、私の昼寝の時間だった。夢うつつの中で「強くかつ軽く、強くかつ軽く」と毎週のように繰り返される、研究者の呪文のような言葉くらいしか覚えていない。話がそれてしまった。つまり何が言いたいかというと、少なからず不真面目ではあったものの、すでに学生時代の時点でそれなりに木材を含めた、いろいろな素材についてはある程度、把握しているつもりだった。
しかし、卓球ラケットメーカーとして創業をめざし、さらに商品を開発するための試行錯誤をして、木材を扱う業者の方と関わる中で、自分は木材について何もわかっていないと感じることがあった。
印象に残っているエピソードがある。木材を買い付けに行った際、ラケットの表板に使用する木材二種で決めかねている時に、決めかねた私が「どちらの木材が軽いですか」と業者の方に質問した際、業者の方は間髪入れずに「丸太の個体差によります、個体によって重さは違います。」と回答があったのだ。その時に思った、なんという実体験に基づく誠実な答えだろうと。
日本人といっても、池乃めだかもいれば、大谷翔平もいるのだ。
世界の木材が山のように積まれたとても大きな倉庫という場所で、世界の木材を買い付けている方の言葉を聞くと、当たり前のことも、初めて実感として理解できることもある。人間が単純ではないように、木材も単純ではないのだ。特殊素材全盛のこの時代だが、WINGSPANは純木材ラケットの追求に引き続き多くの研究時間を費やしたい。まだまだ卓球ラケットに使われていない、面白い性質を持つ木材は・・・ある。
グリップに注目が集まるWINGSPANですが、木材ブレードにもこだわっています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。